百文字日記 平成三十年 一月

平成三十年 一月

 

平成三十年 一月一日  月曜日

  はじめまして、平成三十年。つなぎ目のないはずの日々の流れに、人為的に打たれる区切りのひとつがこのお正月。先述したように、我が家ではシームレスな日々が送られている。簡単に言えば、寝正月というやつだ。

 

平成三十年 一月二日 火曜日

  猫に起こされる。元々起きていたけど、猫の鳴き声は僕を布団から出してしまうほどの力強い効果がある。あまりにさみしそうに。苦しそうに鳴いていたから、それをなんとか和らげんと遊びに付き合うものの逃げられる。

 

 

平成三十年 一月三日 水曜日

  鳥取には「砂の丘」というご当地土産があり、いわゆる銘菓では(まだ)ないのだけど、コンセプトも味も気に入っている。砂丘に見立てたお菓子で、砂のようなおいしい和三盆糖にブールドネージュが埋もれている。

 

平成三十年 一月四日 木曜日

  神戸に帰るバスを取ったのが結構ギリギリだったのだけど、もしかしてギリギリに取る方が得かもしれない。年末年始は二台運行で、遅く取ればすかすかの二台目に乗れるってわけ。ありがとう、腰の重い僕。

 

平成三十年 一月五日 金曜日

  年が明けて間もないのに面白い授業に出て、元町映画館に『ハートストーン』を見に行って、大丸に行って何も買わず、恋人を新神戸駅に迎えに行って、インドカレー食べて帰る。おつかれ、腰の重くない日の僕。

 

平成三十年 一月六日 土曜日

  恋人が会社の忘年会のビンゴ大会で当ててしまった自然薯を喜んで食べる。生でも、焼いても、すりおろして鍋に入れても、ごはんにかけても本当においしかった。自然薯って初めて食べたかもしれない。

 

平成三十年 一月七日 日曜日

  学校でちょっとだけ卒論して、恋人の要望で551の蓬莱に行き、豚まんと焼売をお買い上げ。そのまま鹿鳴茶流 入舩に行く。やっぱり鹿のたたきが本当においしい、透き通るようでかつ力強いあの赤身肉。

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平成三十年 一月八日 月曜日

  恋人が帰る。お互いに付き合っていたい意志を再確認してほっとする。恋人は帰りのバスに乗るとき、本当にさみしそうな顔をする。心が痛い。早く一緒に住めたらいいのにと思う。未来は誰にも分からない。

 

平成三十年 一月九日 火曜日

  提出前日なんだけど、やっと卒論にまじめに取りかかる。大変コスパよく仕上げたと思う。悪く言えばサボったということなんだけど。大半は十一月のゼミ前に仕上げていたもので、そこからあまり手を加えなかった。

 

平成三十年 一月十日 水曜日

  『ジャン=ポール・サルトル研究』で提出しようとしたら、教務の人に「……サルトル研究ですよね?」と訊かれて、「は?」と思っていたら、登録と違うから題字変えて貼りなおせと言われて『サルトル研究』にした。

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平成三十年 一月十一日 木曜日

  yuriさんに淀川河川敷で写真を撮ってもらう。撮られ慣れていないので、全然ぎこちなくて、ぎこちないがゆえにさらにダサくなっていないか心配。しかし彼女のディレクションを信じて、無理難題を言っていただく。

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平成三十年 一月十二日 金曜日

  夜更かしがたたって、朝九時からの歯医者をすっぽかしてしまう。ご迷惑をかけて本当に申し訳ありません。しかも二限にも遅れていく。特に何もせず、センター試験前日なので構内から追い出されてしまう。

 

平成三十年 一月十四日 日曜日

  好きな人問題というものがある。好きな人と会うときは、こちらは一緒にいるだけで気持ちよくなってしまい、相手に対してこちらが施さなければいけない奉仕を怠ってしまいがちだ。そういう問題のこと。

 

平成三十年 一月十六日 火曜日

  就職先の先輩に面談してもらう。顔もきれいで、おしゃれで、仕事もできて、でも嫌な感じはあまりしない最高の男性で、ついでに言えば煙草も吸う。好きな人問題が起こる。かっこよすぎて、打ちのめされてしまった。

 

平成三十年 一月十八日 水曜日

  懲りずにyuriさんとデートする。昼過ぎに合流して、甘いもの食べて、古着を見て、コーヒー飲んで、鹿肉食べて、映画を見て、帰ってお風呂に入って寝る。時間の有効な使い方を学ぶためにこうして楽しく過ごしている。

 

平成三十年 一月十九日 金曜日

  後輩と銭湯に行く。湯船で金沢に行きたいと話していたら、目の前の三十二歳の顔立ちのきれいな男の人が話しかけてきた。いい銭湯の使い方だった。股間の毛が完全に剃られていたのが気になった。言及しそびれて残念。

 

平成三十年 一月二十日 土曜日

  昼過ぎに布団から出たが、がんばって巻き返す。ホームセンターに行って色々なものを買った。補修材で靴底を直し、かわいい面打キャスターでりんごの木箱を可動式にする予定だ。

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平成三十年 一月二十二日 月曜日

  今年も占いに行ってみる。値段が千円上がっていた。けど、楽しさは減っていた。大体去年聞いたのと同じようなことを言われて、新鮮味がなかったのだと思う。占いにも新鮮さを求めるなんてわがままではなかろうか。

 

平成三十年 一月二十四日 水曜日

  髪を切る。お気に入りの美容師さんがやはりいない。またこの人かとがっかりしたが、気分がよかったので愛想をよくする。すると、仕上がりもいつもよりましに見えた。人の間で生きるなら、愛想がいい方が得だ。

 

平成三十年 一月二十五日 木曜日

  美術館に行ったら閉館時間。喫茶店に行ったら閉店時間。行く先々で扉を閉められ、面食らうが、歩き通し、喋り通しだったので全くめげていない。日が暮れてから代わりのお店に入り、おいしいぜんざいを食べる。

 

平成三十年 一月三十一日 水曜日

  色々な出来事を言葉に起こすのが億劫になってくる。頭の中で絶え間なく次の言葉が生まれているのに、それを書き留める間もなく日々は過ぎ去り、いつの間にやら言葉は消える。もう思い出せないあの詩情。